初心者による映画の感想文

切腹
(小林正樹)

この映画には「浮雲」と同じぐらいハマってしまい、なんど見たか不明なほど。この映画、その半分が静止したシチュエーションでの対話で占められている。井伊家に復讐しにきた食い詰め浪人の仲代達也と、家老の三國連太郎が、屋敷の中庭で、家臣取り巻くなか、ひたすらスローペースで延々と侍言葉で対話するシーンがたまらなくいい。聞いたところだと、カリフォルニアの映画学校ではこの切腹が題材のひとつになっているそうだ。スタチックなシーンでどこまでショットを持たせるかが、教材になっているらしい。分かる。周りが完全静止したなかでの、仲代と三國の対話の、口調、表情、しぐさ、そして何より素晴らしい脚本の、すべてが完璧。まるで、禅寺の石庭みたいな美しい緊張感がある、と言ったら飛びすぎか。もっとも、これ、復讐劇なのね。復讐モノってどんな人間にもカタルシスを与えるので、まー、ずるいと思うけど、純粋に映画美学的にいうと、最後の乱闘シーンは不要かもなあ。でも、そうは思うものの、あれを入れないとお客さんもこの僕も、満足しないよね。