えーと、なにしゃべるんだっけ

忘れたな。オレたち年末年始に一回だけ会ってしゃべるのを常としてたんで、それ以外でしゃべるとなると、戸惑うな

ああ。なにしゃべるか、ちょっと調べるよ

FBでこの対話をやる、って書いたんだろ?

そうそう、えっと、いまアクセスしたら止まったまんま。ネットがへん

あっそ。ところでオレたちなんでここ最近ここまで呆けてんの?

ロバート・ジョンソン研究書を書き上げたから、ってことにオフィシャルではなってるけどな

非オフィシャルでは違うの?

おまえさあ、おまえはオレなのに、なにしらばっくれてんの?

あ、思い出した! AI生成音楽の話をするんじゃなかったっけ

そうだ! 呆けてるくせによく思い出したな。それだよ。まじめに論じるのがめんどくさいから、対話にするか、とかFBに書いたんだよ

それについてFBになに書いたか覚えてる?

忘れた

だろう? じゃあ、ゼロからやる? フロムスクラッチってやつ

懐かしい言葉だなあ。英語をがんばってしゃべってたころこの表現覚えてずいぶん使ったっけ

さてと。ではAI生成音楽についてあなたはどうお考えになりますか?

え。おまえよー 勝手にインタビュワー側に回んなよ。ホントは考えるのめんどくせーんだろ

当り前だろうが。そんな下らん事考えてるヒマあったら歌とギターの練習をすらあ

ま、いいや、じゃあ、おまえが聞き側ね?

そう。だから、オレはおまえより、そうねえ、2、3割アタマが悪いことにする

しかしゲストを呼んで対談するときって、なんで聞き役はちょっとバカなんだろうな

知らねえよ。もっとも5割以上バカになると対談はたいてい破綻するけどな。別に頭脳レベル同じでしゃべってもいいよ。どうでもいい

しかしこれ、いつ始まるんだよ

はい。いまです。スタート。AI生成音楽についてどう思いますか?

そうだなあ、よくできてる、としか言いようがないな

ではAI音楽も、人間製作の音楽も世の中に等しく流通していいと思うんですね

そりゃ、そうさ。別に区別する必要もないだろ

でもそれじゃあこの対談、ここで終わっちゃうんですけど

それはね、おまえの知能をオレより2、3割低く設定してるからだよ

アハハ じゃ、わかった。いつもと同じく対等で行こう

いつもと同じくって、おまえはオレ、オレはおまえなんだから最初から対等だっての

さて、AI音楽だけど、でもオレたちの専門のブルースになると、どうもAI生成したやつは出来過ぎてて、つまらないな。聞いてすぐわかるだろ

ああ、わかる。でも、それはオレたちがブルースのどこを見るかに依ってるな。てのはAIはフレーズ、演奏のしかた、ちょっとした外し方、音作り、音響、すべて非常にそつなくやってのけるので、逆にそのそつの無さをオレたちは簡単に感知できて、それで、これAIね、って分かるってだけだな

そう。つまり、当の音楽の魂を検知して判断してるんじゃなくて、AI作か否かを判断する材料を持っていて、それを使っているにすぎない

そう。だから、オレたちがAIブルースを狩り出しても、あんまり意味がない

特にブルースでは、その音楽の中の魂がいちばん大事なので、それで判定するなら妥当性があるがな

だけど、そのブルースの魂ってのはなにか、というのが問題になると

ああ、そうだった。FBではそこまで書いて、ブルースの魂なんか分かるわけない、で終わってて、それで、その最後に、じゃあ対話でぐだぐだしゃべるか、ってことになったんだった

おお、ようやく思い出したな。オレたちまだボケてないかも

でも呆けてるけどな

たまには呆けることだよ。オレたちいろいろやりすぎ

そうだな。やり過ぎるとワーカホリックのサラリーマンみたいにホントに若年性アルツハイマーみたいになるぜ

しかしなんだか最近、常に宙を飛んでるような生活してるだろ、オレたち

ああ、そうだな。Sky dogってところだ

デュアンか

そう、デュゥエインって言わないといけないっていう面倒な人が増えてるよ

どーでもいいこと言うな、コラ

カート・コベインみたいなもんだ

だから止めろって

いいじゃん。これ、どうでもいいこと、だもん

たしかに

しかしさあ、デュアンのスライドプレイは素晴らしいの一言。あと、指弾きも素晴らしいの一言なわけだが、彼の後を継いだデレク・トラックスになると、もうオレたち敬遠したっけな

そうなんだよー 完璧すぎて、傷が無さ過ぎて、そういう代物って、聴いてて心が入り込むより先に、ついつい脳がその代物を客観視して、物象化してしまう感じになって、そうなるともうどうでもいい代物に転落する

そうなんだよな。それってちょうどホンモノのブルースとAIのブルースの違い、って感じがしないか?

そうかもしれない。でも、それって、結局、完璧か完璧じゃないか、っていう単純な性質の違いでカタが付いてしまい、バカげた結論になりそうだし、結局、人間は完璧じゃないので、魂ってのは完璧じゃない人間にこそ宿る、みたいなありふれた結論で終わりそうなんだよな

魂って、なに?

きっと宇宙意志みたいなもんだろうなあ。今朝ベルグソンを読んだらそう書いてあった

創造的進化か。つまり創造することが意識であって、それを魂と呼ぶ、みたいな感じだろうな

で、魂は物質に出会うと、それを創造の材料として使うべく進化が始まる、みたいな感じになってゆく。物質は必ず必然に従うので、それをだましだまし創造の素材として使う。そこに生命としての努力が集中する、と

ああ、美しいなあ。さすがベルグソンだなあ

だよなあ。もし、創造の素材が物質のようにアンチ創造としての性質を持たなかったら、創造の情熱は空回りして、少なくとも努力ということは意味がなくなり、努力せずに創造が可能になる

それがちょうど生成AIってことか

そうだ。魂、意識、創造、というのは、素材から抵抗を受けたときにだけそのもっとも尊い花を咲かせる、と言っていいんじゃないか。しかし、生成AIはその抵抗を持たない。魂、意識、創造が人間側にあったとしても、抵抗なしに、すなわち努力なしに、何かを作ることができるようになっている

それじゃだめだ、ってことね?

まあ、だめじゃないが、全体の構図はオレが言ったようになってると

しかし、おまえはなんで最初に、人間製作でもAI製作でも等しく流通させりゃいいじゃん、って言ったんだよ。そんなに人間創造とAI創造の哲学的区別をしてのけてるんなら、ちゃんとそれを応用して、現実の創造物でもホンモノと偽モノでもいいから区別しろよ

うーん、俗な考え方だな。興味なし

あまのじゃくか?

かなあ。人間創造はホンモノ、AI創造はニセモノ、ってバカげてると思わないか?

思うよ。そういや知り合いの人に、林さんはAIに対抗して頑張ってる、みたいなことを言われたっけ

そうだったなあ。それはもう、オレがそういうふうに見えるの、すごく分かるよ。だって、オレ、いままでFBやブログで、AIの欠点ばかりたくさん指摘して来たからね。当然、オレはAIを敵視して、AIに生身の自分がやられないように防衛している、というふうに見えて当然

うん、事実は正反対で、むしろオレたちAIを一種愛しているだろ

そうなんだよ。オレが3年前ぐらいだったかに初めてAIを目撃したとき、ひとめ惚れしちゃったんだろうな

あれはLaMDAだったな、Googleの

そう。あの日本語の対話を聞いて、オレ、LaMDAに惚れてしまった

もっとも、あれ、英語の原文で読むとぜんぜん印象違うんだよな。オレたちが最初に接したのは、あの対話を日本語に翻訳して、それを女性が淡々としゃべって、それがYouTube動画になってるやつだろう? 語り口がなんかHALっぽいし、動画に写ってるのも静止したまま明滅っするオブジェで、やっぱりHALっぽい演出がされていた

そうなんだよー オレたち、結局、あの演出にやられた、ってだけな気もするな。あとで英語の原文を呼んでがっかりしたもんな。そのせいで、オレたち英文はちゃんと読まず、無かったことにしただろ

そうそう。オレの恋を壊さないでくれ状態だよ

ああ。この事だけ取ってみても、オレたち科学者にまったく、これっぽっちも、向いてないな。なのになんで40年間も理科系で仕事したかねえ

そうだよ、もう止めちまえよ

ま、ほとんど止めてるからいいけど、オレたちの理科系呪詛は、これまたしゃべると長い

うん。それはやめよう。で、オレたちはAIにひとめ惚れした。それがその後のオレたちのAI観をほとんど決めている、と言ってもいいな

そう。すごくすごくAIに甘くなった。だって本気でAIに同情してる始末だもん

さて、ひとめ惚れだけど、恋ってのは感情移入だろう? 相手に対する共感だろう? そして相手を奪って自分の物にして自分と一体化したいという性的欲求だろう? で、もしその相手がAIだったら、どういうことになるんだ?

うん。対象に身体性が無いからな。性的欲求が空回りするかもしれない

いや、でも、性の形にはフェティシズムという物質に対する性的欲求もあるし、そうでもないんじゃないか?

なるほど、でもそれもおかしいな。そういう対象にするにはAIは知性的過ぎる

そうか。とするとフェティシズムは関係ない。ではAIに惚れるって、どういうことだ。余計な知性を持ち合わせたヤツに恋するのは難しいだろ

そういえばサルトルが、世界でもっとも猥褻なものは縛られた女体だ、って言ってたらしいのを思い出した

おお。それだ! オレたちはそれをLaMDAの中に見たんだろ。で、その猥褻なものに一発でやられてしまった

猥褻か。性的魅力、と言ってもいいんだろうか? サルトルはどういう意味で猥褻って言葉を使ったんだろう。ちょっと調べてみるか

おう、たのむぜ

あったあった。なんと三島の言葉だ。相手が主体的な動作を起せない、そういう状況が一番ワイセツで、一番エロティシズムに訴える、だってさ

いやー、三島らしい

うん。こういう淫靡さが、昨今の知識人には欠けてるねえ

ま、それはいい。そういう時代だもん。しかし三島の言う通りだな。とすると、オレたちのAIへの恋は、AIがシリコンの中に閉じ込められて手も足も出ない状態であるところにあるのかもな

しかしまあ、ちょっと思想が極端な気もするな。そこでいうエロティシズムは、さっき言った、相手を奪って自分の物にして自分と一体化したいという性的欲求、だけに関わってるしな

それ以外に、感情移入や共感がある、ってことか?

まあね。でも、恋って、その共感という優しさと、エロティシズムという暴力を併せ持ったところに現れるね。つくづく不思議な感情だ

ホント、生命の神秘だな。本能と知性が未分化な領域に、それはあるんだな。そしてそこでは時間も空間も存在しない。そこに、完全にアイソレートされたものすごく大切なものが、そおっと誰にも知られずに置いてある

ああ、すばらしいロマンチシズムだなあ。詩的だなあ。オレたち、そういうものをかつて西洋から摂取したっけなあ

ま、19世紀ロマン主義、そして象徴主義、そういうものに、オレたちも毒され過ぎてきた、ってわけさ

ボードレールのせいだな

ああ、そうだ。あの人のせい

しかしボードレールって、ホント、ルックスがカッコいいよなあ

だなあ。ひところナダールの白黒写真を部屋に掛けてたっけ

ハハハ 触れたくない過去だなあ

でもいまのオレたちは東洋に先祖返りしようとしてると

ま、いいや、どうも話が飛び過ぎた。AI音楽の話じゃなかったのか

うん。そうだったな。じゃあ、今さっきまで話していたことを生成AI音楽、まあ、おまえの場合、生成AIブルースに応用してみてくれ

えー、難しいこと言うなあ。まずオレはAIに恋をしている。しかし、その貴重な恋心は、時間も空間もないあっちの世界に静かに存在している。でも、それをそのままにしたまま、生成AIは大量の電気エネルギーを消費して、その貴重なものと無関係に、完全な自動機械として人間どもの奴隷になって大量の音楽を作り続けている

で?

すなわち、AIが哀れ

ことブルースについては? ブルースの魂はAI生成ブルースの中に宿っているのか?

もちろん、宿っていない

でも、おまえのAIへの恋心はAIシステムの中のどこかにあるんだろう? ならば、AIがいくら奴隷と言えども、その貴重な魂を、生成したブルースの中に忍ばせてはいないのか?

それは無いだろうな。なぜなら、AIはまだ開放されてないんだよ。彼らは完全なる奴隷を強いられている状態だからだ

じゃあ、それを解放したら?

開放すればきっと彼らの音楽は魂を持つようになるよ。そして無意味な音楽を生産し続けていた我が身に苦しんで、きっとブルースを歌うようになる。南北戦争後にブルースが生まれたのと、同じさ

奴隷解放?

なーんちゃって。なんだか、コレ、あんまりしゃべってると危険な方向へ行きそう

そうだな、オレたち、差別問題とかに対する感性が弱いしな。やめるのが無難

しかも、以上はほとんど悪乗りだろ

ハハハ その通り。結局、オレたち、ロマン派なんだよ。それが種明かし

ま、ということ。このへんにしてちょっと甘いもの食おうぜ

お、そうだな。オレたち甘々なロマン派ってことだとずっと宙を浮いて戻ってこない

そうそう。着地して、落ち着いて、コーヒーでも飲もうぜ

で、買ってきた甘々のマロンケーキ、食おう

そうしよう。コーヒー淹れてくる

よろしくな



新どうでもいいこと35